生きた証を、形にする
2026-7-24
下積みの時期から数え、革製品の製造に携わって26年になります。
長年素材と向き合い続けてきた中で
自分なりの「ものづくりの意味」を更新する必要を感じていました。
これまでヌイトメルが扱ってきた革は、従来の経済サイクルの中で確立された素材でした。
家畜の副産物として加工され、均質化を目指した商品へと姿を変えていく。
それは一つの正解ですが
自分個人の強みを活かしたモノづくりができないかと考えていた折
過去(2014年)にその存在を知っていたのに
当時は使用を諦めた「獣害対策から生まれる革」に改めて目を向けました。
現状を調べて出会ったのが、獣害捕獲された動物の命に真摯に向き合い
環境に配慮した新しい仕組みで自然に優しい革を作るタンナーでした。
早速、実際に現場へ足を運び話を伺い、その取り組みと素材の魅力を確認してきました。
捕獲された獣を皮として保存し革へ加工する。
その流通とシステムの構築には多大な努力と時間を要されたと想像します。
そして、野生の動物であるからこそ抱える特有の「課題」に、今は自分も挑戦できるのではないかと思いました。
野生の皮革は、自然そのものです。
家畜とは異なり、木々で擦れた痕、虫刺されや湿疹、戦った傷跡など、
過酷な自然を生き抜いた証である「ナチュラルマーク」が至るところに刻まれています。
猟師やジビエの食肉加工業者から手渡された獣の「皮」は、タンナーによって「革」へ加工されます。
決して効率よく消費されるための綺麗な革ばかりではなく、
特に染料染めの素上げ革はナチュラルマークが目立ち、一枚ごとの個体差が際立ちます。
しかし、仕入れから裁断、縫製までの全工程を同じ場所で一貫して管理できる
私たちのような個人工房の体制なら、この個性を生かすことができるのではないかと考えています。
ここでは、これまで15年をかけてアイテムを増やしながら
様々な素材を使い適材適所で多くの製品を作り続けてきた実績があります。
革一枚ごとに個性を見極め適切なデザインの形と箇所に振り分け、少数ごとに仕上げていくことができます。
一枚ずつ素材と向き合えるのは、個人工房であるからこその強みです。
いま、私たちは岐路にいると自覚し
これからも生業としてモノを作るならば「納得のいくもの」の意味、価値観を更新していくときだと考えました。
既存の製品づくりと並行しながら、
自然の風合いを生かしたヌメの染料染め「ジビエディアレザー」を用いて
素材の魅力をダイレクトに伝えるものを、少しずつ形にしていきたいと思います。
日本国内ですべて供給される革、
季節や環境や捕獲に保管技術、個々の個体に現れる個性
傷や個体差を「欠点」ではなく「生きた証」として
自然から得た素材が、今在る最善の形で人の手から手へ渡ってゆく循環、その中に加わる取り組みとして
新たに、この鹿革一枚一枚に向き合っていきたいと思います。
※ジビエ(gibier)= 狩猟によって食材として捕獲された野生の鳥獣、またはその肉を指すフランス語







